
Chaos Enscape 4.21.0リリース
Chaosは2026年10月、リアルタイムビジュアライゼーションツール「Chaos Enscape 4.21.0」をリリースしました。
今回のアップデートでは、Chaos CosmosにAI Assets Generator(Beta)を搭載。参考画像をアップロードすることで、テクスチャ付きの3Dモデルを生成し、Enscapeのシーンへ直接配置・編集できるようになりました。
さらに、レイトレーシングによる太陽光の影や人工照明の処理方法を見直し、GPUメモリの使用量を削減。シーンジオメトリについてもGPUメモリ使用量を最大約40%削減するなど、複雑なシーンを扱う際のパフォーマンスとメモリ効率が改善されています。
Vectorworks 2027にも対応し、新しいOpenPBRマテリアルシステムとの互換性を追加。さらにSketchUp 2027 Betaへの暫定対応も行われています。
Chaos Enscapeとは?
Chaos Enscapeは、建築・インテリア・都市設計などのデザインワークフローに統合して利用できるリアルタイムビジュアライゼーションツールです。
設計ソフト上で作成した3Dモデルをリアルタイムに確認しながら、マテリアル、ライティング、カメラ、周辺環境などを検討できます。設計初期のアイデア確認から、デザインレビュー、クライアントへのプレゼンテーション、最終的なビジュアル制作まで、幅広い用途に利用されています。
現在のEnscapeはChaos Cosmosとの連携も強化されており、建築ビジュアライゼーションに利用できる3Dモデルやマテリアルなどのアセットをシーンへ配置できます。ChaosはEnscapeを含む製品群の中で、デザインからプレゼンテーションまでをつなぐワークフローを強化しています。
今回の4.21.0では、こうしたEnscapeのワークフローにAIによる3Dアセット生成が加わりました。
Enscape 4.21.0の主なアップデート
AI Assets Generatorで画像から3Dモデルを生成
4.21.0の最大の注目ポイントが、Chaos CosmosのAI Assets Generator(Beta)です。
参考となる画像をアップロードすると、Enscape上でテクスチャ付きの3Dモデルを生成できます。生成されたモデルは、通常のCosmosアセットと同じようにシーンへ配置して編集できます。後から再利用する場合は、「Downloaded > 3D Models > AI-Generated」からアクセスできます。
例えば、建築プロジェクトで使用したい家具や小物、プロダクトなどの参考写真があっても、Cosmosのライブラリに適切なアセットが見つからない場合があります。
そうした場合に、画像を出発点として3Dアセットを生成できるため、既存ライブラリだけでは対応しにくかったオブジェクトをシーンへ追加する新しい選択肢になります。
AIによる3Dモデル生成は、ゼロからモデリングする代わりに、「必要なアセットをまず用意して、Enscape上でデザインを検討する」というワークフローを実現するための機能として位置付けられます。
なお、AI Assets GeneratorはBeta機能です。生成されたAIアセットには、現時点でいくつかの制限があります。生成モデルの高さは100cmに固定され、プロキシはなくバウンディングボックスが使用されます。また、生成されたアセットは作成したユーザーのコンピューターにローカル保存され、そのユーザーのみが利用できます。
レイトレーシング処理のGPUメモリ使用量を改善
4.21.0では、レンダリング処理におけるGPUメモリの利用方法も改善されています。
レイトレーシングによるSun ShadowsとArtificial Lightsについて、これまで個別に保持していたAcceleration Dataを共有する仕組みに変更。これによりGPUメモリ使用量を削減し、複雑なシーンにおけるナビゲーションや書き出しの改善につなげています。
Enscapeを大規模な建築モデルで使用する場合、シーンそのものだけでなく、ライティングやアセットなどもGPUメモリを消費します。
今回の変更は、新しいレンダリング機能を追加するというより、複雑なシーンを扱う際のEnscapeの効率を改善するアップデートといえます。
シーンジオメトリのGPUメモリ使用量を最大約40%削減
ラスタライズ処理についても最適化が行われました。
4.21.0では、モデルが実際に必要とする頂点データだけを割り当てる仕組みに変更。Chaosによると、シーンジオメトリのGPUメモリ使用量を最大約40%削減しています。
GPUメモリに余裕が生まれることで、より大規模で複雑なモデルを扱う際の余地が広がります。
特に建築プロジェクトでは、建物本体に加えて家具、植栽、人、周辺環境など多数のオブジェクトを配置することがあります。こうしたシーンを扱うユーザーにとって、メモリ使用量の最適化は日常的な操作性にも関わる重要な改善です。
高解像度画像のキャプチャ時のメモリ使用量も改善
画像キャプチャについても、レンダーターゲットをより効率的に再利用することで、高解像度画像を書き出す際のピークメモリ使用量を削減しています。
大きな解像度でプレゼンテーション用の画像を出力する場合など、通常のビューポート表示とは異なる負荷が発生します。
4.21.0では、このキャプチャ処理についてもメモリ効率が改善されています。
Vectorworks 2027に対応
Vectorworksユーザーにとって重要なのが、Vectorworks 2027への対応です。
4.21.0ではVectorworks 2027をサポートし、同バージョンで導入された新しいOpenPBRマテリアルシステムとの互換性も追加されています。
これにより、Vectorworksを最新バージョンへ更新したユーザーも、Enscapeを組み合わせたリアルタイムビジュアライゼーションを継続して利用できます。
設計ソフトのバージョンアップに合わせてビジュアライゼーション環境も更新する必要があるため、最新のVectorworksを使用しているユーザーにとって重要な互換性アップデートです。
SketchUp 2027 Betaにも暫定対応
SketchUpについては、SketchUp 2027 Betaへの暫定対応が追加されました。
Beta版への対応であるため、正式版と同等の安定性を保証するものではありませんが、SketchUpの新しいバージョンを試しているユーザーがEnscapeと組み合わせてワークフローを検証する際に利用できます。
Cosmosアセットの管理を改善
Cosmosとの連携も細かく改善されています。
Cosmos Browserは必要なときにバックグラウンドで自動的に起動するようになり、手動で起動するステップが不要になりました。
また、Enscapeが不足している、または完全にダウンロードされていないCosmosアセットを自動的に検出し、再ダウンロードできるようになっています。
建築ビジュアライゼーションでは多数のアセットを利用することが多いため、こうしたアセット管理の自動化は日常的な操作をスムーズにする改善です。
不足アセットのダウンロード状況を分かりやすく表示
レンダラーホストでは、不足しているアセットをダウンロードしている際に「X / Y」の形式で進捗を表示するようになりました。
これまで進捗バーだけでは処理が止まっているように見える場合がありましたが、現在どれだけのアセットを処理しているのかを確認しやすくなっています。
グリッド表示を改善
ビューポートのGridlinesも変更されました。
従来の引き伸ばしたテクスチャによる表示から、プロシージャルなラインによる描画へ変更されています。これにより、16:9以外のアスペクト比、特に縦長の表示で発生していたグリッドの歪みが解消されています。
縦長のプレゼンテーション画像や特殊なアスペクト比で作業する場合にも、より正確なグリッド表示が可能になります。
Chaos Assistantの名称を変更
Chaos Assistantでは、「Mood Match」という名称が「Sky Match」に変更されました。
機能そのものの大幅な追加ではありませんが、空や環境の見た目を調整する機能として、より分かりやすい名称に整理されています。
Custom Asset Libraryも改善
Custom Asset EditorのConfigurationダイアログでは、ディレクトリに関する説明と警告メッセージが分かりやすくなりました。
独自に作成したアセットを管理しているユーザーにとって、設定時の問題を把握しやすくする改善です。
V-Ray Scene Exportなどの不具合を修正
4.21.0では、多数の不具合も修正されています。
V-Ray Scene Exportでは、RevitのRailing FamilyやLine Familyの一部ジオメトリが.vrsceneへの書き出し時に欠落する問題が修正されました。
また、画像書き出し、Batch Rendering、Material Editor、Cosmos Asset Library、View Management、Site Context、Enscape Impactなど、さまざまな機能について安定性が改善されています。
特に大規模プロジェクトでのアセット管理やレンダリング、複数ビューの書き出しを行うユーザーにとって、こうした修正も4.21.0へのアップデートを検討するポイントになります。
Enscape 4.21.0はどんなユーザーにおすすめ?
建築ビジュアライゼーション
大規模な建築モデルを扱い、多数の家具や植栽、周辺環境を配置するユーザーには、GPUメモリ使用量の改善がメリットになります。
特にシーンジオメトリについて最大約40%のGPUメモリ削減が行われているため、複雑なプロジェクトでの利用を重視するユーザーにとって注目度の高いアップデートです。
AIを活用してアセット制作を効率化したいユーザー
今回のAI Assets Generatorは、4.21.0の最も大きな新機能です。
「この家具を使いたい」「このオブジェクトに近いモデルが欲しい」といった参考画像がある場合、そこから3Dモデルを生成できるため、アセットを探す時間や、簡単なモデルをゼロから作成する手間を減らす新しい方法になります。
ただし、現時点ではBeta機能であり、生成結果やサイズ、保存方法などに制限がある点には注意が必要です。
Vectorworksユーザー
Vectorworks 2027を利用するユーザーにとって、OpenPBRを含む互換性が追加されたことは重要なポイントです。
最新の設計環境を維持しながら、Enscapeによるリアルタイムビジュアライゼーションを利用したいユーザーに適しています。
SketchUpユーザー
SketchUp 2027 Betaへの暫定対応により、新しいSketchUp環境を検証しているユーザーもEnscapeとの連携を試すことができます。
まとめ
Chaos Enscape 4.21.0は、AIによる3Dアセット生成と、複雑なシーンを扱うためのパフォーマンス改善が大きなポイントとなるアップデートです。
特にChaos CosmosのAI Assets Generatorでは、参考画像からテクスチャ付きの3Dモデルを生成し、Enscapeのシーンへ直接配置・編集できるようになりました。
さらに、レイトレーシングによるライティング処理のGPUメモリ使用量を改善したほか、シーンジオメトリのGPUメモリ使用量を最大約40%削減。高解像度画像のキャプチャ時のメモリ使用量も改善されています。
Vectorworks 2027やSketchUp 2027 Betaへの対応、Cosmosアセットの自動再ダウンロード、GridlinesやCustom Asset Libraryの改善など、日常の設計・ビジュアライゼーション作業を支える機能も強化されました。
Enscape 4.21.0は、AIを活用したアセット制作と、より大規模なシーンを扱いやすくするパフォーマンス改善によって、設計からビジュアライゼーションまでのリアルタイムワークフローをさらに実用的なものへ進化させるアップデートといえるでしょう。
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